デイサービスの個別機能訓練加算Ⅱを維持する人員配置術 ─ PT/OT不足時の現実的な解決策
- リハジョブゴー運営事務局

- 5月27日
- 読了時間: 7分

通所介護(デイサービス)において算定される「個別機能訓練加算」は、施設経営における収益の柱の一つです。特に「個別機能訓練加算Ⅱ(LIFE連携加算)」は、1ヶ月あたり20単位が算定可能です。メインとなる「個別機能訓練加算Ⅰ(イ:56単位/日、またはロ:76単位/日)」と組み合わせることで、利用者1名あたりの収益を大きく高めることができます。例えば、加算Ⅰ(イ)と加算Ⅱを併算定し、月に20日利用した場合、利用者1名あたり約11,400円相当(1,140単位)の報酬となります。利用者30名の施設であれば、月額約34万円以上の収益機会となり、安定した経営基盤の構築に寄与します。
しかし、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の慢性的な不足により、「PTが急に退職し、加算が算定できなくなる」という悩みを抱える現場は少なくありません。本記事では、算定要件を満たし続けるための人員配置の組み立て方と、現実的な解決策について整理します。
1. 個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱの要件をおさらい(2026年5月時点)
通所介護における個別機能訓練加算の基本要件は、原則として以下の通りです。
個別機能訓練加算Ⅰ(イ・ロ)
•機能訓練指導員の配置: 専従1名以上
•計画の作成・実施: 個別機能訓練計画の作成および実施
•評価と見直し: 計画進捗の評価と見直し(3ヶ月毎)
•単位数: Ⅰイで56単位/日、Ⅰロで76単位/日(配置体制により異なる)
個別機能訓練加算Ⅱ
•要件: Ⅰの要件を満たした上で、LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出とフィードバックの活用
•単位数: 20単位/月(Ⅰに追加して算定)
ここで実務上の鍵となるのは、「機能訓練指導員」の定義です。PTやOTだけでなく、言語聴覚士(ST)、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師(一定の条件あり)も機能訓練指導員として認められています。つまり、必ずしもPTやOTでなくても要件を満たすことが可能です。
2. PT/OT欠員で加算が算定できなくなる典型的なパターン
実際に加算の算定が困難になる理由は、以下のパターンが大半を占めます。
•専従PT/OTの急な退職: 後任の採用に2〜3ヶ月を要し、その間「専従要件」を満たせなくなる。
•病欠・育休による長期不在: 1ヶ月以上の不在により、機能訓練計画の進捗管理が滞る。
•書類業務の遅滞: 計画書の作成や評価が3ヶ月毎のサイクルで回らなくなる。
•LIFE提出データの未整備: 加算Ⅱの算定を目指したものの、データの提出が滞ってしまう。
加算継続の本質は、「PT/OTが何人いるか」ではなく、「人員配置要件と書類運用が破綻していないか」にあります。
3. PT/OT不足時に取れる5つの選択肢
PT/OTが不足した際、施設が取れる選択肢は主に以下の5つです。
選択肢 | 概要 | メリット・デメリット |
A: 看護職員の配置 | 看護職員を機能訓練指導員として配置する。 | 【メリット】既存スタッフで対応可能。 【デメリット】本来業務(健康観察・与薬等)との両立が困難な場合が多い。 |
B: 柔道整復師・あま指の採用 | 柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師を採用する。 | 【メリット】PT/OTと比較して求人母集団が大きく採用しやすい。給与水準もやや抑えられる傾向。 【デメリット】機能訓練の専門性においてPT/OTと異なる部分がある。 |
C: スポットPT/OTの活用 | 欠員時にスポット採用を活用し、「専従」体制を維持する。 | 【メリット】週2〜3回、半日程度のスポット勤務で計画書の作成・評価業務を維持できる。費用対効果が高い。 【デメリット】スポット人材の確保と業務の引き継ぎが必要。 |
D: 近隣施設との兼務 | 同法人内や地域連携により、機能訓練指導員を兼務させる。 | 【メリット】新たな採用コストを抑えられる。 【デメリット】常勤要件や専従要件と抵触するリスクがあり、事前の確認が必須。 |
E: 加算区分の変更 | 加算ⅡからⅠへ、あるいは加算なしへ一時的に変更する。 | 【メリット】人員不足時の緊急避難的措置。 【デメリット】収益の減少。利用者への説明やケアプランの変更が必要となる最終手段。 |
実務においては、収益の減少を防ぎつつ、新たな人材を採用するまでの橋渡しとして、「選択肢C:スポットPT/OTの活用」が現実的な解決策として注目されています。

4. スポットPT/OTで加算を維持する具体的な運用モデル
スポットPT/OTを活用した場合の具体的な運用モデルを想定してみましょう。
【想定モデル】
•施設規模: デイケア(利用者30名)
•人員体制: PT/OT専従1名、看護職員1名
•状況: 専従PTが急遽退職。後任採用まで3ヶ月を要する見込み。
•対策: 月4回(半日ずつ)、スポットPTを活用する。
【具体的なタスク配分】
タスク | 担当 | 頻度 |
朝礼・利用者観察 | 看護職員(機能訓練指導員兼務) | 毎日 |
個別機能訓練計画書作成 | スポットPT | 月2回(隔週) |
計画書3ヶ月毎見直し | スポットPT | 該当時 |
LIFEデータ入力 | スポットPT + 介護職員 | 月2回 |
集団機能訓練の実施 | 介護職員 + 看護職員 | 毎日 |
個別機能訓練の実施 | 看護職員(指導員) + 介護職員 | 計画に基づく |
【コストと収益の試算】
•支出: スポットPT 月4回・半日(3〜4時間)× 平均1.5万円 = 月額約6万円
•収益: 個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱ報酬(利用者30名 × 約114,00円) = 月額約342,000円
•差額: 月額約282,000円の利益を確保しつつ、加算算定を維持。
新規採用までの期間、適切な人員配置と業務分担を行うことで、収益の連続性を保つことが可能です。
5. 加算維持に不可欠な書類運用の5つのポイント
加算の審査において指摘を受けやすいのは、以下の5つの運用ミスです。これらを徹底することが加算維持の鍵となります。
1.計画書の3ヶ月毎評価: 期限管理表(Excel等)を運用し、リマインダーを設定して評価漏れを防ぐ。
2.LIFEデータ提出: 月初に前月分を確実に提出する。提出忘れは算定不可となる最大の要因。
3.専従勤務時間の記録: タイムカードや勤怠表を整理し、実地指導等の審査に備える。
4.個別計画の医療職指定: PT/OT/看護職員等の指定欄の記載を怠らない。
5.体制届の更新: 法人名や人員構成に変更があった場合は、速やかに保険者へ届け出る。

6. 中長期的な体制構築に向けて
スポット人材の活用はあくまで短期的な橋渡しです。中長期的には、以下のような取り組みによる安定した体制構築が求められます。
•常勤PT/OTの採用強化: 求人媒体の見直しや、給与・待遇水準の適正化。
•多様な職種の活用: 看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師を機能訓練指導員として育成するための研修体制の整備。
•法人内ローテーション: 複数施設を運営している場合、法人内でPT/OTを共有・運用する仕組みの構築。
•LIFE運用の標準化: 介護職員でもデータ入力が可能な、標準化された業務フローの整備。
7. よくある質問(FAQ)
Q. スポットPTが作成した個別機能訓練計画は要件を満たしますか?
A. 直接雇用型のスポット採用であれば可能です。ただし、サービス契約形態(労働者派遣事業に該当しないか等)を確認の上、医師や主治医の意見書との整合性を確保してください。
Q. 月にスポットPTを呼ぶ最低頻度はどのくらいですか?
A. 計画書の作成・見直しに必要な実労働日数によります。利用者30名規模の施設であれば、月2〜4回(半日程度)が現実的な最低ラインと考えられます。
Q. 加算Ⅱ(LIFE提出)の運用負荷はどの程度ですか?
A. 月1回のデータ提出と、フィードバック結果の計画への反映が必要です。スポットPTであっても、施設側の運用フローが整っていれば、月2回程度の関与で十分に対応可能です。
8. まとめ ─ 加算は「人」だけでなく「運用」で守る
個別機能訓練加算Ⅱを維持するためには、単にPT/OTを配置するだけでなく、計画書の作成、LIFEへのデータ提出、そして評価サイクルの運用を滞りなく回すことが本質です。
•看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の活用により、要件を満たす道は複数存在します。
•スポットPT/OTを活用して採用までの橋渡しを行うことで、加算の算定を継続できます。
•月数万円の投資で月10万円超の収益を守ることができるのであれば、経営判断としては明確です。
「PTが辞めたから加算を諦める」と判断するのは早計です。 柔軟な人員配置とスポット人材の活用を組み合わせることで、施設経営の柱である収益をしっかりと守り抜きましょう。
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